3.果樹の幼若性・花芽形成・胚発生機構の解明

1)花芽形成過程
   花芽形成を形態学的に把握することも重要です。例えばリンゴでは6月下旬~7月上旬の初夏に花芽分化がスタートします。一方カンキツ類は10月の低温により花芽形成が誘導されます。花芽分化の時期はその植物体が生育している環境によっても異なります。果樹等木本植物の場合、日長以外の要因によっても花成が誘導されるようですが、その詳しいメカニズムはまだよくわかっていません。


2)花芽形成遺伝子

果樹においては、長期の幼若期間(発芽から初開花までの期間)が効率的な育種を妨げる要因の1つとなっています。そこで、リンゴの花芽形成機構を解明し世代促進技術を開発するため、リンゴの花芽形成に関与する遺伝子を単離し、遺伝子組換え等の技術を用いて機能解明を行いました。その結果、花芽形成に関与する複数のリンゴ遺伝子の単離・同定を行い、それらの遺伝子を導入することにより、通常6~8年のリンゴの幼若期間を8ヶ月間と極めて著しく短縮することに成功しました。

  
図1 シロイヌナズナの花芽形成に関与する遺伝子
    
図2 MdTFL1遺伝子の抑制によるリンゴの早期開花モデル
   
図3 8ヶ月で開花した遺伝子組換えリンゴ

3)FT遺伝子の機能
FTタンパク質は花成ホルモンの性質を備えている物質です。果樹等木本植物でも、このFTタンパク質が花成誘導を引き起こしていると考えられます。私たちは、果樹等木本植物のFTについて分子生物学的手法により、その機能を解明したいと考えています。
 
 リンゴFT遺伝子を導入したシロイヌナズナ
 右2つの組換え体はは早期開花している
   
ポプラFT遺伝子を導入したリンゴ「グリーンスリーブス」 
インビトロで花芽が形成されている


4)TFL1遺伝子の機能
 花を咲かす遺伝子があれば、花を咲かせない遺伝子もあるはずです。TERMINAL FLOWER1は花芽形成を抑制する遺伝子として発見されました。当研究室ではリンゴのTFL1遺伝子(MdTFL1)の機能を探るため、シロイヌナズナにその遺伝子を発現させる実験を行っています。MdTFL1が導入された植物体(35S::MdTFL1)は開花時期が遅れました。野生型の植物体は1ヶ月で開花しますが、MdTFL1高発現系統の中には2ヶ月も開花しないものもあります。



参考文献:

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